溝江所長・崎永取締役部長・木下営業隊長

トマト対談 第4回 トマト以外もつくる「たかしま農園」誕生。

これまでのおはなし

第三セクターで運営されていたトマト農園を引き受けることになった崎永海運。
離島・高島の産業として守り育てたいという思いとはうらはら、一年目は予想を大きく割り込む赤字。
社員総出での営業活動、畑での格闘、荒波の航海が数年続きました・・・。

努力が実を結び、事業が黒字転換しようとするタイミングで、
贈答用パッケージのリニューアルをすることになり、デザイン事務所を訪ねます。

崎永:

当時のパッケージをもって、打ち合わせに行きました。その時は一通りの打ち合わせをしたのですが、最後に「パッケージのリニューアルだけでは売り上げは上がらない。全体を提案させてもらえないか?」との相談がありました。箱1つ分のデザイン費しか計上していなかったのに、ブランディングを提案されたのです。

ブランディングの提案を受け入れてみようという気持ちになられたのは、なぜですか?

崎永:

これでだめなら、もうだめだろうという思いがあったんです。箱だけを変えても、それをどこで知ってもらうのかなど、共感できる部分があったので、話を聞いてみようという気持ちになりました。デザイン事務所の方には経営的な数字と目標を共有する会議から同席していただき、事業の現状把握と、これまで関わってきたメンバーの思いを知っていただきました。その上でブランディングに取り組んでいただきました。

そうして新しいブランドの枠組みができたわけですが「トマト事業部」ではなく「たかしま農園」と、トマトの名前が取れていますね。

溝江:

「たかしま農園」という名前になったのは、会議の際に「私たちは、今後はメロンも作りたい、他にもチャレンジしたいことがたくさんある」と発言したからなのです。今はトマトを作っているけれども、密かに試作にチャレンジしている農産物があったんです。

崎永:

私たちの知らないところで、溝江所長はよく試作されているんですよ(笑)それならばということで、たかしま農園を大きな枠組みとしてつくり、その中のトマトとして位置づければいいのではないかという提案をいただいたのです。

たかしま農園のブランディング展開
農園という枠組みを作ることで、今後、トマト以外の農産物も出荷しやすい舞台が整った。トマトの名前には「ハート」が入っている。これは、たかしまフルーティトマトの断面がハート型であること、農園に関わる人たちのハートが熱いことから採用された。
溝江:

今年は試作メロンを初めて販売したんですよ。まだチャレンジ中の農産物がありますので早くお届けできるようにしたいと思います。

ブランディング前と後、狙った効果は出ましたか?

木下:

ブランディング後の最初の商談会の時、声を掛けずともバイヤーの方がブースに集まってくれたんです。パッケージもかわいくなりましたし、糖度そのものを商品とする「糖度別売り」の仕組みもわかりやすく整理されて、ネーミングもキャッチー。商談会もイベントもとてもやりやすくなりましたね。ブース全体の雰囲気も揃うので、遠目からでも目立ちます。

その効果が嬉しくて、おもわず商談会初日の夜に、打ち上げ会場からデザイナーさんに電話をして、よかったよ、よかったよ!とお礼を伝えました。(笑)

見た目が気になり立ち寄ってくださった方に、まず「とにかくコクがあり甘い」ということを最初に伝えます。また、一般のトマトよりも栄養価が高いことも丁寧に伝えるようにしています。試食していただければ、その美味しさでファンになっていただく自信はあります。その流れがスムーズに作れるようになったのが良かったですね。

営業担当の木下さん
営業担当の木下さん。明るいキャラクターとトークで、溝江所長に並ぶ「農園の顔」的存在。
崎永:

デザイン賞などで賞をいただいたり、ブランディングそのものが注目されたのがきっかけで、テレビや雑誌の取材が相次ぎました。「このブランディングができれば、ニュースになりますよ」とデザイン事務所の方は言っていたのですが、その通りになりました。

木下:

メディアの露出が上ったことで、認知度も上がったことを実感しています。3年前、10人に1人の人しか知らなかった。それが、10人に8人が知っているトマトになったのではないでしょうか。

崎永:

九州全土でオンエアされる番組にも取り上げていただきました。こうした形でスポットが当たり、現場も本社もモチベーションが上がりました。どちらかというと赤字で苦労をしていた部署なので…。社長はよく「今は、崎永海運で最も未来を語る部署になったのではないだろうか」と話しているんですよ。

木下:

テレビや雑誌、新聞の報道で知名度が上がりました。知名度は購入時の意思決定に関わるので、ありがたいですね。また、ビジュアルが整ったことは、以前から懇意にしてくださるお得意様からもお褒めの言葉をいただきましたね。

崎永:

美味しいトマトだから、ギフトにも合う。そういったニーズを取り込めるブランドになってきたのではないかとおもいます。

社員みんなでつくる、たかしま農園ブランド。

崎永:

たかしま農園のトマトは1年で4ヶ月しか取れず、年間を通した安定供給ができません。展示会でも現物を持って行けないことが多々あるのです。ただ、考え方を変えれば「4ヶ月だけのトマト」とその価値を伝えられる。私たちも、ブランディングを機に、自分たちの強みを見つめ直し、気づくきっかけとなりました。

溝江:

今、こんなものも作っているんですよ。といっても、私はいつも確認する側ですが(笑)

全て手作りの会報。ファンクラブ会員にシーズン時期の数ヶ月、毎月一回、郵送されている。
全て手作りの会報。ファンクラブ会員にシーズン時期の数ヶ月、毎月一回、郵送されている。

つい読みたくなりますね。

崎永:

ありがとうございます。そう言ってもらえると、続けなくてはと思います。今は、たかしま農園の存在が、崎永海運全体を活気づけるものになっていると感じています。

溝江:

みなさんの注目や期待が高まっているので、今後、何を作ってもおいしく甘くないといけないというプレッシャーはありますね。でも、いいプレッシャーになっています。

木下:

美味しさへの期待感は営業の現場でも感じます。誰もが知る高級フルーツ店さんから「今年もおいしいですね」と言われたことや、大手スーパーさんが「やっぱり、たかしまフルーティトマトは日本一うまい」と言っていただいたり。顧客のお客様からの励ましや感想にも、毎年力をいただいています。